第5章  冷めていく思い

 以前、しんじの親たちは、どうしてしんじがハナコのことがそんなに好きなのか尋ねたことがあった。その時、しんじは、ハナコのことを人間のように思っていて、ハナコの考えていること、ハナコの言いたいことが、自分にはよくわかるからだと言っていた。実際、ハナコは、しんじに対し人間の言葉でしゃべっていた。それがしんじに通じていただけのことである。しかし、暗示にかかっていたせいで、ハナコの言葉も馬の鳴き声にしか聞こえなかったのである。

 しんじがハナコのことを人間のように思っていたことは、動物を愛する人間特有の動物を擬人化するものと同じものだった。しんじの親達も初めのうちは、そういうものだと思っていた。しかし、ハナコと間を持った夜から、しんじのハナコを見る目が異常になっていった。さすがに親達もそれをあまり良いこととは思えなくなって、2人を引き離そうと考えはじめた。しかし、しんじを傷つけることの無いいいアイディアが浮かばないまま、月日が過ぎていった。

 ある日のことである。牧場主は、雌馬達に種付けをしていた。そうしたところ、たまたま一本の精液が余ったのである。あまり気が進まなかったが、これをハナコに使ってみることを思いついた。

 ハナコは、最初それがなんだかわからなかった。だから、牧場主のされるがままに後ろを向いた。膣に注射器のようなものを入れられて、初めて気がついたが、その時にはもう遅かった。冷たい精液が入ってきた時には、吐き気がした。そうして、馬の精液が体の中に入っていることを思うと、惨めな気持ちになってきて、涙がとめどなく溢れてきた。

 その夜もしんじはハナコのところにやってきたが、ハナコはとてもそんな気分になれず、しんじを拒んだ。しんじにしても、ハナコが拒むからと、結局自慰行為で処理してしまった。ハナコがしんじを拒んだのは、その夜が初めてだったのである。

 その夜以来、しんじのハナコに対する性的感情は少し弱くなった。親達もしんじのそうした感情の変化がそれとなくわかって少し安心した。しかし、そうなってもハナコを疎ましいことには変わりがなかった。

 やがて、種付けに失敗したことがわかると、雌馬としても役に立たないと考え、余計厄介な存在であると思い始めてきた。もっとも、ハナコは人間なのだから、子供ができるはずがない。しんじにしても、初めこそ直接したが、2度目からはコンドームを使用していた。しんじは、なんとなく馬とのセックスに不潔さを感じていたし、病気も心配していたからである。



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