第96回 99.09.27くらい 次世代エネルギー開発秘話
 今度こそ画期的な発明をしてしまったのだ。

 ああ、わたしの名前はみやちょ。とある研究機関で高分子化学について研究している。肩書きは一応主任だ。生体高分子ならびに合成高分子を分子設計し、地球環境と調和する生分解性高分子材料の創製を目的に研究を推進していた過程で、大変画期的な発明をしてしまったのである。えへん。

「主任、主任、しゅいん、しゅにーんっ!」

 どうやら助手君がお呼びのようだ。

「なんだね。助手君」
「ええと、そのリンクはマズくないですか? 一応ここには理化学研究所からアクセスしている人もいるんだし、このページのことを密告られたら怒られますよ」
「あっ、いや、これはまずかったか。でも、うちはホームページすら持っていない中小企業だからなあ。これくらいは良いじゃないか。もう」
「良くないです。そもそもリンクする必要性が無いじゃないですかあ」
「ぷんぷん。いいだもん。ところで助手君っ」
「はい」
「わたしを呼ぶ時、どさくさに紛れて変なことを言わないように」

 そう。わたしは、『利尻海産物研究所(株)』、略して『利研』という中小企業で研究職をしているのだ。理化学研究所とは似たようなものだろう。だから、これで良いのだ。今はしがない中小企業だけど、今回のこの発明で世界に名を轟かせる予定なのだ。有名になれば、リンクなど何の問題も無い。むしろリンクを張ってやっていると威張っても良いくらいなのだ。

「ところで助手君、まずはこれを見て欲しい」
「ええと、変わった服を着ていますね。でも、なんだか磯臭いですよ」
「なにしろ、これはワカメからとれた繊維で作られた生地を利用して作った服だからな」
「へえ。でも、なんでまたそんな服を……」
「今度、利研でこの服を売り出そうと思うのだ」
「こんな服が売れるんですかあ? なんだかヌルヌルして気持ち悪そう」
「何を言う。世間にはヌルヌルした服を着たいと言う人だっているのだ。そういう人には打って付けの服だろう」
「そんな人いませんよ」
「いや、一人くらいはいるだろう。商品名まで考えているのだ」
「なんですか?」
「名づけて『利研のワカメスーツ』だ」
「ハイハイ。用件はそれだけですか、ではサヨナラ」
「ちょっ、ちょっと待て、今バカにしたなあ」
「はい」
「くそーっ! サヨナラはワカメのコト、バカにしてえ」
「やれやれ、バカにしたのは、ワカメのコトじゃないんだけどなあ」

 ちっ、最近助手君も生意気になったな。査定を下げてやるぞ。ホントに。

「それよりも助手君」
「はい」
「今のはちょっとした廃品利用で、本命はこれなのだ」
「ええと、これは何ですか? まさか、オヤジアブラではないでしょうね。イヤですよ。また、あんなことになるのは」
「いやはや、それは大丈夫だ。今回は人体ではなく、ワカメから生成してみたのだ」
「ふーん。なんだかアルコールみたいに見えますね」
「そう。そうなんだ。これは、ワカメから取れたアルコールで、なんと石油の代替燃料として使用できるのだ。石油枯渇が叫ばれている昨今、商品化された暁には大ヒット商品になると思われるのだ」
「へえ」
「商品名まで考えているのだ」
「名づけて『FUELワカメちゃん』だ」
「ヤレヤレ……」

 やはり生意気だ。最早、ボーナスは無いものと思えよ。

「しかし、主任。どうしてワカメからアルコールができるんですか? ワカメって糖分がほとんど無いのに……」
「おいおい助手君。君はワカメ酒というものを知らんのかね。ワカメから酒を造ることができるならば、ワカメからアルコールを生成することも可能というものだろう」
「……主任。ひょっとして、ワカメ酒を呑んだことが無いでしょ?」
「なっ、なんだ?」
「ええと、ワカメ酒っていうのはですね。ワカメからアルコールを生成するわけじゃなくて……、もにょもにょがもにょもにょで……」
「ええーっ!、そうなの!?」

 うーむ。助手君は、見かけに寄らず大人なんだなあ。こんなことを知っているなんて。もにょもにょというか、もじゃもじゃがするのかあ。査定を下げるのは、どうしようかなあ。しかし、ということは、どうしてこのようなものができてしまったのだろうか。不思議である。これは奇跡だ。素晴らしい。驚くべきことである。まさに利研のmarvelousといったところだろう。

「それよりも主任。ワカメから石油代替品ができることって、そんなにたいしたことなんですか? ワカメじゃなくても、サトウキビからアルコールを採ることは既に実現されているじゃないですか」
「ふむ。そう思うだろう。しかし、サトウキビは温暖な地方でしか採れないのだ。しかし、ワカメであれば、日本全国何処でも採ることができるのだ。世界はともかく、日本のエネルギー問題は解決するだろう。資源の少ない日本も外国からの輸入に頼らなくて済むようになるのだ。素晴らしいことなのだ」
「でも、石油代替品ともなれば、大量のワカメが必要じゃないですか。養殖するとしても、そんなに大量のワカメを生産できるとは思いませんが」
「その心配は要らないのだ。なにしろ、ロスインディオスによるとワカメは決して尽きることがないと言われているからな」
「ワカメでも?」
「ワカメでも」
「尽きないと?」
「尽きないと」
「ワーカメでもー?」
「ワーカメでもー」
「尽きないとー?」
「尽きないとー」

 まったく助手君も、ロスインディオスなんて誰もわからないようなボケがわかっているではないか。やはり、査定を上げておこうかな。

「ええと、その対策は既に練られているのだ。ワカメ養殖用の肥料も併せて発明しておいたのである。これがそんじょそこらの肥料ではない。撒いてしばらくすると、なんとワカメが100倍になっているという優れものなのだ」
「まさか……」
「名づけて『殖えるわかめちゃん』なのだ」
「……もう、良いです」

 さて、そういうワケで早速ワカメの養殖である。わたしは海に『殖えるわかめちゃん』をばら撒いた。一晩待てば、海一面にワカメが広がっているだろう。後は待つだけだ。わたしは、好結果を期待して床に就いた。
 そして、一夜明けた。大変なことになっていたのである。海岸は大量の亀で埋め尽くされていたのだ。辺り一面亀亀亀亀亀亀亀亀亀。いったい、どうしたというのだろう。ふと、昨日ばら撒いた『殖えるわかめちゃん』のパッケージを手に取ってみた。そして重大な間違いに気がついたのだ。

 ややっ、これは類似品の「ふえるわ、カメちゃん」だったかっ!

 というワケで、今日の分はおしまいだ。では、また会う日まで。


 ↑これは日記猿人のなんたらボタンである。

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