第79回 98.01.25くらい 『胃がね、気持ち悪いの』

 いやはや。この間のおまけでも書いたが、最近胃の調子が悪いのだ。

 ああ、わたしの名前は、みやちょ。コンピュータのプログラムを書いて暮らしている。自分で言うのもなんだが、それなりの仕事をしていると思うのだ。

 それにしても、この胃が痛いのには、すっかりまいってしまった。日曜日から月曜日にかけて、胃がキリキリというか、シクシクというか、よくわからないがそんな感じなのである。キリキリとかシクシクとかジンジンとかドボドボとか、胃の痛みを表現する言葉は数知れない。ところが、わたしにはどうもよくわからないんだなあ。どの痛みがどの表現に当てはまるのか。

 たとえば、胃潰瘍になったとする。これが胃潰瘍になったことがある人だったら話は早い。「胃潰瘍のような痛さです」と言えば済む。また、胃潰瘍になった時、「それはキリキリ痛むというヤツですね」と説明してもらっていれば、「ああ、なるほど。これがキリキリというやつか」と学習することができる。次からは「キリキリと痛む」と胸を張って言うことができるのだ。
 しかしながら、胃潰瘍を経験したことが無い人にとっては、謎の痛さなのだ。表現しようがないのである。……はっ、もしかして、わたしってば、胃潰瘍なのではないか?

 よくわからないが、胸ヤケがヒドいのだ。吐き気もする。それならば、単に飲み過ぎたとか、食べ過ぎたとかいう可能性もあるのだが、どうにもそんな感じではない。それに日曜日は、特に食べ過ぎも飲み過ぎもしなかったのだ。うーっ、キボヂ悪い。

 今日は、さすがに落ち着いてきたけどね。それでも、昨日、一昨日はひどかった。やはり、胃潰瘍なのかなあ。胃潰瘍は気づかないうちになっていて、気づかないうちに治ってしまったという人も多いというからなあ。何度も繰り返している人もいるという。
 そういえば、この感じ、今までにも何度か経験している。実は、わたしって何度か胃潰瘍になっているのではないだろうか。そんな気もしてきた。まあ、「この感覚が胃潰瘍の感覚です」とでも、医者に説明されないとわからないからなあ。なんとも言えないけどね。

 それにしても、もし胃潰瘍だとしたら、相当ストレス溜まっているということなのかなあ。もう少しお気楽に生きた方が良いのかもしれない。と言いたいところだが、今以上にお気楽にしていると怒られそうだ。まあ、わたしの場合、ストレスが原因というより、ヘリコバクター・ピロリ菌とかその辺が原因だろうなあ。

 それにしても困ったもんだ。気持ちの悪さが頂点に達すると、キーボードを打つこともままならない。いや、ものを考えることすらままならない。困るんだよなあ。「こんな胃など要らない」と叫びたくなってくるのだ。すると、どうしたことだろう。

「おい。君は、わたしを切り捨てるつもりなのか?」

 腹の底から声がした。わたしは、慌てて周囲を見渡した。しかし、ここには誰もいないのだ。

「わたしはここだ」

 わたしの腹がピクンと動いた。これがわたしの胸なら、乳首がピンクというところだが、腹の方はピンクというには程遠い。自慢じゃないが、どちらかというと黒い方だと言われているのだ。だから、腹がピクンなのである。

「コラコラ、つまらないことを言わない」

 どうやら、わたしの腹が喋っているようである。何だ、何だ。わたしは、一体いつの間に腹話術をおぼえたんだろうか。いやいや。腹話術ってこんなモノではなかったと思うぞ。わっ、わっ、わっ、一体なんなのだ?

「わたしは胃潰瘍である。しかも、君の見立て通り、ヘリコバクター・ピロリ菌によるものだ」

 そうか、ヘリコバクター・ピロリ菌による胃潰瘍だったのか。って、別にヘリコバクター・ピロリ菌による胃潰瘍だからといって、言葉を喋るなんていう話は聞いたことはないぞ。そもそも、胃はわたしの体の一部だ。独立した意志を持つなんて有り得ない。科学的に証明してみろ。

「わたしは、何だか知らないがミトコンドリアのDNAが突然変異を起こして発生したようだ。何だか知らないがヘリコバクター・ピロリ菌と君の胃の細胞のミトコンドリアのDNAが融合したようだ」

 ふむふむ。

「何だか知らないが、遺伝子組み替えが自然発生的に起こってしまったようなのだ。そして、何だか知らないが意志を持つ、君とは別の生命体になってしまったのだ。何だか知らないが」

 何だか知らないが科学的である。

「ところでものは相談だが、実は君の提案を飲むのはやぶさかではないのだ」

 ん? 提案って?

「胃を切り離す。つまり、わたしと君とで別々になるということだ」

 うーん。そんなことをいきなり言われてもなあ。胃が無くなれば良いなんて、ほんのはずみで言っただけだ。心の準備ができていない。

「しかし、わたしが胃潰瘍である限り、君は痛い思いをするわけだ。その痛みが消えるのだから、こんなに良いことはないと思うぞ」

 うーむ。わたしは考えた。そんなことが可能なのか。しかし、この痛みから解放されるなら、それもいいかもしれないしな。それに腹が無くなるということは、ダイエットなどしなくてもスリムな体型になるというものだ。試しにやってみてもらおうか。

「では、行くぞ」

 すると、その腹は、わたしの腹からポコンと飛び出してきた。ん? なんだか変な文章だな。ともかく、特に痛みも無く出血も無く、腹が体から離れた。同時に胃の痛みもすっと消えた。これは良い。
 腹の方は、細胞を変化させたのだろうか、ミッキーマウスのような手足を付けて立っている。奇妙な感じの生物だ。このような生物は、今まで見たことがない。もっとも、元々が腹だからな。腹だけの生物などいないのだから、見たことがない生物の形をしていても、仕方が無いというもんだ。ちなみに断面部はどうなっているのだろう? ああっ!!

 大事なものがなくなっているのに気が付いて、思わず声をあげてしまった。大事なものというのは、所謂大事なところである。平たく言うとちんちんである。いや、あんまり平たくはないか。もっこりするものだからな。
 それはともかく、よく見ると腹には可愛らしいちんちんが付いていた。おっと間違えた。これは自分のだ。自分で可愛らしいということはないか。それもともかく、おいっ!! わたしの大事なものをどうするつもりだ。

「どうするつもりだと言われてもなあ。これは、腹の一部だからしょうがない。腹は、下腹部も含めて腹なのだ」

 うーむ。それは正論である。腹にイチモツというやつか。

「そういうことだ。内蔵と陰部は、腹のものである。ところで、この設定が何かに似ているということに気が付かなかったか?」

 ん。なんだ。もしかするとアレか。

「腹・内蔵・陰部」

 というわけで、今日の分はおしまいだ。では、また会う日まで。


 ↑これは日記猿人のなんたらボタンである。

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