第75回 97.12.23くらい 『クリスマスだから』

 なにがクリスマスなんだか。

 我が家のクリスマスといえば、ケッタッキーのフライドチキンとシャンメリーです。貧乏くさくてやってられません。まあ、日本の一般的な家庭には、こんなものがお似合いでしょう。それよりもこの娘達が大きくなった時の方が心配です。おそらく、クリスマスにカコ付けて、愛がどうのこうのと勘違いのバカ騒ぎをするのでしょう。親としては心配ですが、それが無いというのも寂しいかもしれません。
 いずれにしても、こんなものを日本に持ちこんで広めてしまったところに、日本人の浅はかさを感じます。バレンタイン・デーなんていうのもそうですが、所詮、日本人の一億総中流という妄想につけ込んだ商売から来ているのですから。他人がしている事を自分もしなければ、不安になるというだけの事で、皆クリスマスをしているだけなのです。

 そう言いつつクリスマスらしきものをしてしまう私にも、相当情けなさを感じます。やはり、他人がしている事をしていないと不安なのでしょう。そんな事を考えさせられてしまうクリスマスが嫌いです。

 と、ヤクルージは言った。

 その晩の事である。ヤクルージの所に幽霊が現われた。そして、夢の中へと連れ去られたのである。夢の中には少年時代の自分がいた……



 ああ、ども。

 わたしの名前はみやちょ。作家をしている。主に童話を扱っている。こう見えても、童話界では結構名前が知られているのだ。わたしのことを「日本のグリム兄弟」なんて呼ぶ人もいる。しかし、それは納得がいかない。一応これでも一人で書いているのだ。
 そもそも、わたしには兄も弟もいないのだ。わたしのどこが兄弟だというのだろうか。まあ、穴兄弟くらいはいるかもしれないが、そういうことを言い出すと、最後には「人類皆兄弟」という結論になってしまうではないか。

 それはさておき、冒頭の文章である。実は、これは今書きかけのモノなのだ。しかし、どうにもオチがつかなくて困っているのだ。締め切りが間近に迫っているというのになあ。タイトルは決まっているのだ。その名も「クリスマス・テロル」。

 どうにも煮詰まってきたので、仕事を一旦中止して、ちょっと外を散策してみるコトにした。ひょっとして街に出れば、何か良いアイディアが出るかもしれない。そして、いつもの散策コースに出た。散策コース、散策コース、お仕事中止。

 街は、イルミネーションで飾られていた。しかし、どうにも貧相である。こんなものは、イルミネーションではない。ニセモノである。ええと、つまり……
 と、言いかけてヤメた。あまりにもつまらないからだ。しかし、言いかけてやめるくらいなら、最初から言わなきゃ良いというもんだ。我ながら呆れ返ってしまった。そんなの意味無えじゃん。

 街は美味しそうな匂いで溢れかえっていた。よく見ると、あちらこちらの店でローストチキンが焼かれ、売られていた。しかし、中華料理店までもローストチキンを売っているというのは、便乗商法ではなかろうか。
「ローチュトチキンあるあるよー」
「レストラン・千代」の店頭では陳さんが声を張り上げていた。

 しかし、それはローストチキンではなく蒸し鶏であった。蒸し鶏と老酒とのセット販売であった。そこで、わたしは尋ねた。
「おいおい、これのどこがローストチキンなんだい?」
 すると、陳さんはこう言った。
「ローストチキンないあるね。ラオチュウとチキンあるね」
 なるほど。

 電気屋のテレビでは、大相撲が映し出されていた。若の花と曙の対戦である。わたし、実は若の花のファンなのだ。でも、若の花がなかなか横綱になれないのが、歯がゆくてしょうがない。わたしは思わず隣にいた男性に同意を求めた。
「若の花は、横綱になれますかねえ」
 すると、隣にいた男性はこう答えた。
「若花の綱かい?」
 それでは、いつもみんなの笑い者である。

 角を曲がると、少女が立っていた。カゴを持って何かを売りつけているようである。年末恒例のマッチ売りの少女であろうか。わたしは、ライター派なので無視しようとしていたら、どうやら違うようだ。少女は、フロッピーディスクを配っていた。そのフロッピーには「IE4.0修正差分ファイル」とラベルが貼っていた。なるほど、パッチ売りの少女か。いずれにしても関係無い。わたしは無視して通り過ぎた。

 更に角を曲がると、今度は血気盛んな少女が立っていた。日の丸のハチ巻に軍服姿である。ええと、これはあっち寄りの少女だ。よく見ると、アンケートを取っている。
「敵国語に興味がありますか? 一日コーヒー1杯分の費用で簡単に敵国語を習得できるんですよ」
 どうやら、キャッチ売りの少女も兼ねているらしい。これもちょっと無視して通り抜けた。

 もう一つ角が曲がると、またまた少女が立っていた。今度は、何売りの少女だろうか。
「腕時計は要りませんかあ、こんなにカッコ良い腕時計がたったの千円ですよお」
 どうやら、Watch売りの少女である。ベタ過ぎる。しかも、偽ブランド商品のようだ。Gショックなら考えても良いが、こんな時計は要らない。わたしは、そそくさと通り抜けようとした。

 すると、突然腕を掴まれた。
「お願いします。買ってください。買ってくれないと困るんです」
「でも、時計は間に合っているからなあ」
「実は工場が不渡りを出しまして、退職金がこの腕時計なんです」
「現物支給というやつか」
「ええ、そこで少しでもお金に換えないと、年が越せないんです」

 見ると、カゴの中には大量の腕時計があった。
「しかし、その工場は、再建できないものなのかい?」
「再建どころか法人登記も抹消しました」
「それは辛かろう」
「再建無いー、法人無いー」
 彼女は、さめざめと歌った。

 しかし、つぶれた工場の製品では困る。
「買ってやっても良いのだが、つぶれた工場の製品では保証が無いからなあ」
「いいから買ってくださいよお。まだ、600個のうち2個しか売れていないんです」
「それは大変だな。しかし、その計算だと全部売り切れてしまう前に電池が切れてしまいそうだ。そうなったらどうするんだい?」

 すると彼女は、質屋を指差しながらこう歌った。
「電池がー切れた場合はー、あそこらに売りつけてー、千円でばら撒き続けるー」

 というわけで、今日の分はおしまいだ。では、また会う日まで。


 ↑これは日記猿人のなんたらボタンである。

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