第44回 96.12.15くらい 『クリスマス・バージョン』

 そろそろクリスマスだ。そういうわけで、今日はクリスマス・バーションでお送りしたい。どの辺がクリスマス・バージョンかというとこの辺だ。↓


 ところで、みんな良い子にしていたかな? 良い子にしていないと君の家にサンタクロースが来ないよ。良い子にしましょうね。それにしても、今年はサンタクロースが来てくれるのだろうか。ちょっと不安だ。そういえば、ここ数年サンタクロースが家に来ないのだ。わたしは、そんなに悪い子だったかなあ。ちゃんと寝る前に歯を磨いているんだけどなあ。
 という話をしていたら、会社の後輩に笑われた。「みやちょさんって、サンタクロースをまだ信じているんですか?」って。これだから最近の若い者には困ってしまう。おそらく彼らは、悪い子にしているから、サンタクロースを見たことがないのだろう。わたしは、きわめて科学的・論理的人間ゆえ、霊の存在など信じてはいないが、サンタクロースの存在は信じているのだ。実際に証拠があるものについては否定できないのである。

 子供の頃、クリスマスの朝に目覚めると、枕元にサンタクロースからのプレゼントが置かれていたことがある。これが何よりの証拠なのだ。まあ、サンタはお父さんだっていう説もあるが、わたしの場合、母太り、小太りの家庭だったのだ。サンタのお父さんなどいないのだ。わたしにとって、サンタがお父さんであるという説は何の意味も持たないのだ。わたしのお父さんはジュンイチだし、サンタではないし。

 しかし、これだけでは納得してくれないだろう。では、こんな話をすると信じてもらえるだろうか?


 5年程前のクリスマス・イブである。とある街角で彼女と待ち合わせをしていたのだ。ところが彼女は来なかった。待っても待っても来なかった。もっとも来ないのはわかっていた。尾崎紀世彦ディナーショーのチケットを添えた手紙を出したのに、彼女からの返事が来なかったからである。
 ちなみに、どうして尾崎紀世彦かというと、この時期全国各地でディナーショーが開かれるが、中でも一番人気なのが尾崎紀世彦だからである。それはもう日本全国尾崎紀世彦ディナーショーという感じだ。紀世彦の夜というくらいだからなあ。きよ彦の夜だとちょっとイヤだが……

 それはともかく彼女は来ない。とほほと落ち込んでいたら、隣にいた初老の男性が声をかけてきた。
「なかなか来ませんね」

 初老の男性は、割腹が良く白髪と白髭が印象的だった。日本人にしては濃い目の顔で、まるで外人と見まがうような顔立ちだった。というか本当に外人なのだろう。日本語がヤケに上手かったけどね。

 その彼とわたしは、すぐに意気投合した。どうやら彼は、この後仕事の予定があり、その時間までヒマつぶしをしたかったらしい。まあ、わたしとしても彼女が来なければすることがない。ちょっとだけ話に付き合ってあげることにしたのだ。まあ、話と言っても他愛の無いもので、ちょうどその当時流行っていたものだった。

 もし絶対に食べなければならないとしたら、どれを選ぶ?





 所謂究極の選択というやつだが、ちょっとひねって選択肢を3つにしてみたのだ。究極の三択。ロース。

 まあ、こんなくだらないやりとりで小一時間程ヒマをつぶしていたのだ。やがて仕事の時間が来たようで、彼は立ち上がり着替えを始めた。着ていたコートを裏返しに、そしてかぶっていた帽子も履いていたズボンも裏返しにした。あっと言う間に全身真っ赤の派手な格好に変身したのである。そして、彼はこう言いながら立ち去った。

「そろそろ仕事の時間だ。行かせてもらう。そうそう。君は良い子のようだから、今日の最初の仕事は、君へのプレゼントにしよう」

 すると、どうしたことだろう。

「ごめーん。遅れちゃった……」

 彼女が現われたのである。来ないはずだった彼女が来たのだ。そうか。これがプレゼントだったんだ。クリスマスの夜に奇跡が起こったのだ。しかし、それだったらもっと早くよこせというもんだ。ディナーショーに間に合わなかったじゃないか。>サンタクロース

 ええと、最初からわかっていたかと思うが、その初老の男性がサンタクロースだったのである。そんなことがあったから、わたしはサンタクロースの存在を信じているのだ。だから、みんなも街角で初老の男性を見かけたら、よく注意してみよう。サンタクロースかもしれないのだ。見るとすぐにわかるだろう。サンタクロースは、外人のように濃い顔だちなのだ。濃い人はサンタクロース。

 というワケで、今日の分はおしまいだ。では、また会う日まで。


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