第35回 96.11.21くらい 『香港シネマスターとの思い出』

 みんなは知らないだろうけど、香港にはジャッキー・チェンというすごいスターがいるんだ。映画俳優でありながらカンフーの達人というすごい人なんだ。それどころか、映画監督までやったりするんだ。それでは、もうスターとしか言いようがないじゃないよね。
 ん? ええと、知ってた? うーん。みんな通だねえ。でも、僕はちょっとだけみんなに自慢できることがあるんだ。それは実際に遭ったことがあるっていうことなんだ。みんなは、彼に遭ったことがあるかい?

 みんなは、彼が気が優しくて力持ちだということを知っているよね? まるでドカベンみたいだけど、ドカベンとちょっと違うのは、彼が太っていないってことと香港の人であることなんだ。でも来年には香港も返還されるから日本人になっちゃうけどね。ええと、たしか香港は日本だったよね。ええと違ったかな? 違うと思った人は下のボタンを押してね。
 そんな投票を押させようとする悪だくみはともかくとして、彼が気が優しくて力持ちってことを示すのにこんな逸話があるのは知っているかい? というのは、僕と彼が遭った時のことなんだ。通のみんなは知っているかもしれないけれど、まあ僕の自慢話なんだから、ちょっとだけ話をさせてね。

 その日、僕はドライブに出かけたんだ。そして、運の悪いことにタイヤがパンクしてしまったんだ。「まったくもう」ってな感じさ。タイヤを交換しないことには話にならない。っていうんでタイヤを交換しようとしたんだ。そしたら、たまたま運の悪いことに、その日に限ってジャッキを積んでいなかったんだ。ジャッキアップをしないでタイヤ交換なんかできっこないじゃないか。僕は途方にくれていたんだ。
 そこをたまたま通りかかったのが、何を隠そう彼だったんだ。困り果てた僕を見て、「それは大変だ。その車をちょっと持っててあげるから、タイヤを交換しなよ」と言うと、スッと車を持ち上げたんだ。なんと素手でだよ。信じられないものを見てしまったね。

 おかげで、なんとかタイヤを交換することができたんだ。そして、「ありがとうございました。是非ともお礼をしたいので、名前を教えてください」と言ったら、彼は「礼には及ばないです。その代わりお金をください」と言ったんだ。最初「彼は、なんてガメツイのだろう」と思ったね。
 でも、心配することは無かったんだ。なんと「1円で良いよ」と言うんだ。これは、つまり「恩義に感じないでくれ。自分はこの1円という報酬で仕事をしただけさ」という彼流の優しさだったんだね。その時は彼が誰だかわからなかったけど、後で調べたらあのジャッキー・チェンだったので二度驚いたというわけさ。というのが僕の自慢話さ。

「わたし、ジャッキ1円ネー」

 そんな彼の言葉が僕の耳にコダマしたんだ。

 というワケで、今日の分はおしまいだ。では、また会う日まで。


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