第30回 96.11.13くらい 『また・ふられみやちょ』

 いやはや、わたしはどうしてこうモテないのだろうか。フラれ続けて50年、今日もまた、わたしはフラれるのであった。
 今わたしは、恋の病を患っているのだ。お医者様でも、クア・リゾート草津でも治せないというヤツだ。胸がこう苦しいのだ。飯もロクに喉を通らないので、大変困っているのだ。

 悩んでもしょうがない。こういう時は、行動あるのみだ。結果を恐れては、何もできない。「見る前に跳べ」である。ええと、ここまで書いていて、昨日とまったく同じ事を書いていることに気が付いた。しかし、今日はここからが違うのだ。ええと、ここまで書いていて、昨日とまったく同じ事を書いていることに気が付いた。しかし、今日はここからが違うのだ。ええと、ここまで書いていて、3日前とまったく同じ事を書いていることに気が付いた。しかし、今日はここからが違うのだ。

 3日前に書いたように、今日わたしは旅に出た。なにせ、こう毎度フラれていると、傷付いた心を癒したくなるというの人情というものだ。本当は、明日わたしは旅に出ますと言いたかったところだが、いかんせん旅に出る時間が無くて、今日になってしまったのだ。また、あなたの知らない人とは一緒できなった。一人旅だ。そして、春まだ浅い信濃路に行ったわけでもない。人によっては、今は冬の始まりと言うかも知れないが、わたしの感覚では秋の終わりである。大秋とも言える。英語で言えばオータムだ。ちなみに9月くらいであれば、まだ小秋と言える。英語で言えばコタムだ。いずれにしても、春まだ浅いとは、とてもでないが言えないのである。

 一人旅ならみちのくと言いたいところだが、残念ながら行き先は、京都である。みちのくの場合、「ここで一緒に死ねたらいい」と言ったりしなければならないので大変だ。あまつさえ、そこで片方だけ助かったりすると、もっと大変である。みちのく一人荼毘にふすというやつだ。
 そういうわけで、行き先は京都であった。一人になりたい気分の時は、京都に限るというものだ。京都は、お互いに干渉しない街で、大変一人旅に向いているのだ。歌にもあるように、「京都では誰もがひとりひとりきり」なのである。

 ええと、今日は木曜日である。「会社はどうした?」という声もあることだろうが、それはその「みや千代日記」ということで許してもらおう。実は、ちょっと昼休みにちょっと抜け出して行ってきたのだ。
 ちょっと抜け出すのはいいんだが、この場合、まだ就業時間であることを忘れてはならない。つまり、事故を起こして会社に迷惑をかけるようなことがあってはならないということだ。しかし、事故は、いくら注意しても起きる時には起きてしまうものである。そこでわたしは、旅行保険に入ることにした。掛け捨ての保険なら、安く済むのだ。ケチらないで入っておこう。中には「保険に入るなんて恥だ」なんていう人もいるかもしれない。しかし、昔の人も言っているではないか。「旅の恥は掛け捨て」ってね。

 さて、その京都であるが、注意すべきことがいくつかある。そのひとつは、ポン引きに注意せよということだ。実は、わたしも引っかかった一人だ。「お兄さん、お兄さん、良い娘いるよ。なんと女子大生だ。しかも、そんじょそこらの女子大生とは違うよ。京都女子大だ。はっきり言ってレベルが違うよ」(京都弁に直して読んでくれ)だなんて声をかけられたら、すっかりその気になってしまうというものだ。しかし実際は、京都女子大ではなく、京都所司代だったりするのだ。まあ、そういうのが好きな人は、これでいいのかもしれないが。

 それから舞妓さんにも注意した方がいい。本物の舞妓なら良いが、たまに観光客が扮している場合があるのだ。わたしの見た例では、なにやら動物の鳴き声がやたらと上手い舞妓さんがいた。これは珍しいと思ってよく見たら、実は江戸屋小猫だったのである。わたしとしては、困ってしまってワンワンワワンと鳴き真似をするしかなかったのである。舞妓の舞妓の小猫ちゃんというやつだ。

 もうひとつ、ぶぶ漬けにも注意したいところだ。京都では「ぶぶ漬けを食え」(京都弁に直すこと)としつこく言われることがある。しかし、これを本気にしてはいけないのである。わたしも一度うっかり本気にして、ぶぶ漬けをいただこうとしたら、とんでもないものが出てきたことがあるのだ。
 とんでもないというのは、そのぶぶ漬けには、思いっきり大量のカラシが乗っていたのからである。いや、まだカラシだけなら良い。ウルシまで入っていたのには、さすがにマイッタ。

 そこで「こんなもの食えるかっ!!」と言ったところ、こんな答えが返ってきた。「これは京都ならではのモノです。他の地方では決して食べることはできません。お腹を壊してしまいます。でも、京都では平気なのです。みんな食べてます」(やっぱり京都弁に直して)とのことだ。不思議だが本当のことらしい。

 ウルシ食ったって〜 カラシ食ったって〜 京都の中では 平気 なの?

 というワケで、今日の分はおしまいだ。では、また会う日まで。


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