第15回 96.09.28くらい 『外人に声かけられて』

 ええと、昨日の続きからだな。

 さて、ここに1つのゆでたまごがあるとする。いや、無い。なぜならば、捨ててしまったからだ。冷蔵庫に入れずに1日経ったら腐ってしまったのだ。そういうわけで、たまごを使って状況を説明すると言う試みは、見事に失敗してしまったのだ。すまん。

 さて、今日は、昨日の反省を踏まえて、たまには日記らしく今日あったことを書いてみようと思うのだ。しかし、次回予告を書いてしまっている。こともあろうに「外人に声かけられて」である。今日は、なんとしても外人に声をかけられなくてはならないのだ。家にいて外人に声をかけられるということは、あまりない。仕方がないので街に出てみたのだ。外人のメッカ渋谷である。
 しかし、渋谷に行ったからといって、そうそう外人に声をかけられるものかと疑う人も多いだろう。しかし、自慢ではないが、わたしは外人に声をかけられやすい体質なのである。世の中には、いろいろな人がいて、いろいろな体質の持ち主がいるが、わたしの場合、外人に声をかけられやすいというのがそれなのだ。

 最近は、外国人が少ない地域で働いているため、声をかけられることがめっきり減ってしまったが、渋谷で仕事をしていた時は、本当によく声をかけられた。週に1度は声をかけられていた。多い時には週に3度も声をかけられていた。何人かで歩いていても、外人は必ずわたしに向かって話しかけてくるのである。これは、もう体質としか言い様がないだろう。

 そもそも、どうしてわたしにばかり声をかけてくるのかわからないのだ。わたしが英語ができそうに見えるのだろうか? 自慢ではないが、わたしは英語があまり得意ではない。まあ、日本語の次くらいには得意ではあるが、だいたい日本語も不自由な人なので、その実力は推して知るべしである。
 わたしは、日本語の発音が悪い。舌が短くてキレイに回らないのである。そのせいであまり女の人を歓ばせることができないのだが、それはおいといて、たまにら行の発音がRの発音になってしまうのだ。だからと言って、見た目で「こいつ、ら行の発音がRの発音のやつだな」なんてわかる人はいないと思うのだ。いくら外人でも。

 山手線に乗っていた時のことである。東洋系と見られる外人が、わたしの隣で本を読んでいた。本というのは、旅行用英会話の本である。そして、本を閉じるとおもむろに「恵比寿ハ、ドコデスカ?」(これは英語であったが再現できないので日本語で書く)と尋ねてきたのである。あのですね。わざわざ本を読んで英語で話しかけるくらいだったら、初めから日本語で話してください。

 あるいは、「わたしは外人顔をしているのではないか?」という説もある。高校生の時、ナンパした女の子に「オレって実はハーフなんだ。」と言って騙したこともある。その頃は髪を染めていたのだが、白髪が何本かあってこれがまた中途半端にしか染まらないのだ。丁度金髪のような感じになる。これを見せると、女の子はつい騙されてしまうのである。
 まあ、それでも「メヒコ・クヒナ」だなんて名乗っていなかったけどね。で、女の子が外人とのハーフっていうのを連想したところで、「ハーフといっても、男と女のハーフなんだ」とやるわけだ。そして、「実はオレ、男と女の間に生まれたんだ。お父さんが男でお母さんが女なんだ」と言うのだ。だいたい女の子はシラけてくれる。うん。この手は使えるのだ。

 というのはおいといて、英語に苦手なわたしであるが、実はそんなに外人との会話に不自由していない。身振り手振りで、だいたい通じるものだ。最近英会話教室が流行っているのが不思議である。まずは、みんなジェスチャー教室へ行くべきなのだ。「わたしったらね。近頃ジェスチャーの夢を見るの」というのも難儀だけど。
 それはともかく、身振り手振りっていうのは、大変有効なコミュニケーションの手段なのだ。以前、姉ちゃんがイギリスに留学していた時のことだ。一度、姉ちゃんに連絡を取る為にホームスティ先に国際電話をかけたことがある。向こうの家の人が出たんだが、それでも身振り手振りでなんとか通じたものだ。まずはジェスチャーから始めようということだ。

 あっ、ええと、そうだった。渋谷に行った話を書かなければならなかったのである。それにしても長い前フリだ。これが無ければ簡潔な文章も書けるし、毎日書くのもそれほど苦ではないというもんだ。さて、結論から言うと、やはり外人に声をかけられたのだ。みやちょの面目躍如である。

「アナタハ、神ヲ信ジマスカ〜!?」

 いやはや、予想とは違う声のかけられ方であった。わたしの体質は、外国人観光客に道などを尋ねられるというものだ。久し振りで勘が鈍ったようである。

 わたしは、この手の人には弱いので、丁重にお断りすることにした。

「いえ。自分は仏教ですから……」

 すると、この外人。

「似テナイデスネェ。高倉健ノモノマネ」

 と、ぬかしてきやがった。「自分は不器用ですから……」か。なるほど。でもおまえに言われる筋合いはないのだ。

 というワケで、今日の分はおしまいだ。では、また会う日まで。


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